ブッシュのアメリカは、なぜオーウェルの「1984年」に似ているのだろう2005/09/08 13:54

2004年11月17日

寄稿者アーカイブ

ブッシュのアメリカは、なぜオーウェルの「1984年」に似ているのだろう

BUZZFLASH ゲスト評論

「アメリカ2014:オーウェル風物語」の著者ジョナサン・グリーンバーグ

ブッシュ大統領が、自分の「負託」だと主張することを実行しようとしている今、何百万人ものアメリカ人が、その在職期間が一連の失敗と欺瞞によって限られている指導者に対して、これほど多数の国民が投票できたことに困惑している。その答えとして、私はジョージ・オーウェルの小説「1984年」をお読みになられるようお勧めしたい。また、この選挙のシーズンに勝利するには、余り知られてはいないが共和党員右派の不可欠の要素である「認識の操作」と呼ばれる方針があるのだ。

認識の操作とは、要するに、真実など重要ではないという原理のもとで機能する。党が選挙民に対して、真実だと納得させられることこそが、真実となるのだ。ブッシュ政権の第一期の間、大統領と政権の高官達は、イラクには必ずや大量破壊兵器があり、アルカイダや911攻撃ともつながっていると言明するたびに、「認識の操作」を実行してきた。

結果的に、事実を理解している人々よりも、こうした広くテレビ報道された欺瞞を信じてブッシュに投票した人々のほうがはるかに多かった。あるCNNの出口調査では、国際テロリズムの行為の一つたりともイラクは決して支援したことなどなかったという網羅的な調査の後でさえ、ブッシュに投票した人の81%が、イラク戦争はテロに対する戦いの一部であると考えていた。

「認識の操作」戦略の容認に非常に近いこととして、ブッシュ政権のある上級顧問が「現実を基盤としたコミュニティ」で暮らし、「認識可能な現実を慎重に検討すれば、解決策が得られると信じている」アメリカ人を嘲ったという最近のニューヨーク・タイムズ・マガジン記事がある。もはや世界はそういう方向で動いているわけではない。我が国は今や帝国であり、我々が動いて、我々自身の現実を造りだすのだ。」

それ自身の現実を造りだす政府とは何と恐ろしいものだろう。しかしこのような現実には賛成できないアメリカ人投票者にとって、もっと驚くべきで、もっと分かりにくいのは、上品に言えば、矛盾する真実とでも呼べる、圧倒的な証拠にもかかわらず、5900万人の国民がジョージ・ブッシュ再選に投票したことだ。

ジョージ・オーウェルが、答えを用意してくれている。

ビッグ・ブラザーの1984年世界の中心的な前提は、オーウェルが「ダブルシンク=Doublethink(二重思考)」と呼び、本の中でこう定義したものだ「二重思考とは一つの精神が同時に相矛盾する二つの信条を持ち、その両方とも受け容れられる能力のことをいう。」(文庫本275ページ)

「1984年」中のオセアニアという架空の帝国では、公民権は「何も考えないこと、考える必要がないこと。」を意味していた。ビッグ・ブラザーの政府は、競合する二つの帝国との間で、戦争と同盟を繰り返している。ある時には、愛国的な演説の最中に、敵が変わり、聴衆は即座に新たな現実を受け入れる。彼らには選択肢はない。「1984年」の中で「オーウェルは言っている。「異端の中の異端こそ常識だった。」(文庫本104ページ)

支持者達が常識をはたらかせないように説き伏せるという点で、ブッシュ政権は大成功してきた。先月、メリーランド大学の国際政策姿勢プログラムという調査で、ブッシュ支持者の72%が、イラクは実際に大量破壊兵器を持っているか(47%)或いは、大量破壊兵器を製造しようという大がかりな計画を持っている(25%)と信じていることが明らかになった。この調査は、広く報道されたCIAの「デュルファー報告」、フセインは全ての大量破壊兵器計画を1991年の湾岸戦争後間もなく消滅させ、決して再建しようとはしなかったと結論を出した1億ドルをかけた網羅的な調査の後に行われている。デュルファー報告はまたサダム・フセインはアルカイダのテロリスト達を支持していなかったことも見いだした。

アメリカは大量破壊兵器計画、或いは、アルカイダ支持という証拠無しで戦争をするべきだっただろうかと尋ねられて、調査対象のブッシュ支持者の58%が「いいえ」と答えた。ところがその同じ投票者が戦争を支持しているということは、「識別できる現実」を受け入れるということが不可能であるのか、或いは拒否しているということを示唆している。

これは偶然ではない。三年間にわたって、大統領とその政権は、あらゆる機会を活用して事実を歪曲し、国民の認識を操作してきたのだ。決定的なCIA報告の後でさえ、ブッシュとチェイニーは、イラクでの戦いを、911の攻撃を引き起こした連中との戦いと、意図的に関連ずけた。そして、イラク戦争を始めてから数ヶ月後に「我々は大量破壊兵器を発見した。」と大統領が宣言したことを誰が忘れられよう。

私たちは皆、この政権によるうんざりする主張の繰り返しを聞かされてきた。いわく、フセインはアメリカ合衆国に対するさしせまった危機である、フセインの大量破壊兵器を武装解除する為の国連の査察プログラムは失敗した、アメリカ本土におけるテロリストの行動を阻止するにはイラク戦争が必要だ等々。こうした主張の一つたりとも本当ではなかったのだ。事実は、元財務長官のポール・オニールが昨年明らかにしたように、2001年1月最初の閣僚会議で、政権はサダム・フセインとの戦争をしようと計画していたのだ。911攻撃の9ヶ月前だ。

現政権のアルカイダ追求さえ、オーウェルの「1984年」から抜き出すことができるだろう。本の中では「無知は力である」というのがもう一つの重要なビッグ・ブラザーのスローガンだった。911直後、大統領は、どんなことがあろうとも、攻撃の犯人達を捕らえることを辞さないと誓ったのだ。それは彼の政権が、ビン・ラディンの親戚達を含むサウジ・アラビア人が沢山乗った飛行機がアメリカ国外に飛び立つことを許可した直後の事だ。F.B.I.の尋問も受けずに。そして、6ヶ月後、我が国の軍事資源の大半をイラクに対する戦争に振り向けようと下準備をしているさなか、ブッシュはビン・ラディンについてこう語ったのだ。「彼はもはや社会の隅に追いやられた存在だ...私は彼の為にさほど時間を費やしてはいない...実際、彼のことはほとんど気にしていない。」2002年4月には、統合参謀本部会議長マイヤーズはそれに続いてこう述べた。「目標は、決してビン・ラディンを捕らえることだったわけではない。」

オーウェルが、ダブルシンク(Doublethink=二重思考)と「1984年」の陰鬱な世界を造りだした時、彼はスターリン統治下のソ連を風刺していたのだ。彼のメッセージが、我が国そのものに、もっともぴったりあてはまってしまうというのは、アメリカにとって悲しい時代だ。

http://www.buzzflash.com/contributors/04/11/con04503.html

ジョナサン・グリーンバーグ、『2014年』中に真理と疑惑を見いだす2005/09/08 13:58

2004年12月9日 インタビュー・アーカイブ

SF本の著者ジョナサン・グリーンバーグが、『1984年』、『2004年』と『2014年』の中に、不安に落とし入れるような真理と疑惑を見つけ出す

もちろん、究極的な真実の再定義は、先月の選挙における電子投票装置の「順調な成功」である....だが、これに対して「第四階級」(=言論界)、大切な独立メディア、この選挙が不正だったかどうかを探り出すのに必要な作業を行うことができる資源、人材、影響力を持った数十億ドルのメディア・コングロマリットは何をしているのだろう? 『アメリカ 2014』:オーウェル風物語の著者、ジョナサン・グリーンバーグは語る。

BUZZFLASH インタビュー

今日のアメリカ社会の中に、『1984年』の、小説に影響を与えたファシスト政権の側面を見いだすとき、私たちの多くは恐怖にひるむ。『アメリカ 2014』:オーウェル風物語、という小説を初めて書いた調査報道記者ジョナサン・グリーンバーグ(ドーン・ブレアというペンネームで書いている)は、今からわずか十年先、政治的におかしな方向に進んでしまった未来世界のアメリカにいざなってくれる。下記BuzzFlashとの議論の中で、グリーンバーグはジョージ・オーウェルの反ユートピアの傑作を振り返るだけでなく、我が国の現在の実態と比較しているが、どれだけささいなことで、我々が将来の悪夢つまり『アメリカ 2014』の世界に滑り込んでしまうかということも明らかにしてくれている。惨事に至る足がかりと彼が見なしているものには、電子投票を「順調な成功」と称するブッシュ政権の情報操作や、ジャーナリスト/芸能人が「ニュース」を伝えるという文字メディア以後の時代の現実や、「ダビャシンク」による常識の置き換え、等がある。

(訳注:「ダビャシンク」 ダビャ=Dubya テキサス弁のWの発音から。George “W”. Bushのこと オーウェルの『1984年』の中で使われている表現「ダブルシンク」=二重思考、同時に矛盾する二つのことがらを信じるという言葉のもじり)

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BuzzFlash: 『アメリカ 2014』の主人公は、現在の政府とは違う、オーウェル風アメリカ政府用の広告を制作しています。嘘が真実で、真実が嘘と理解されるオーウェル風の世界を実現するにあたって、マス・メディアはどれだけ重要なのでしょう?

ジョナサン・グリーンバーグ: オーウェル風の世界を、実現し、維持するにはマス・メディアの支配 が不可欠でしょう。「ビッグ・ブラザー」政府は全ての情報を、単純で、くだらない、「愛国的」なものにとどめようとし、事実を独立して判断する機能をはたすあらゆるメディアを回避するでしょう。道理が引っ込み、関連質問の時間が無い所では、嘘が最も有効なのです。

それが『アメリカ 2014』では、書き換えられた憲法の元で「神の合衆国」と改名した政府が、どのメディア企業が、公共の電波を「戦時において」用いるに値するほど「十分に愛国的であるか」を決定する絶対的な権力を持っている理由なのです。万一、フォックス・ニューズの親会社がクリア・チャンネルを買収し、そして大統領と国土安全保障局長官が、それが公共の電波とインターネットを使用するに値する唯一の企業だと判断することを想像して頂きたいのです。

それが『アメリカ 2014』の世界です。それは、あらゆる情報の絶対的な支配について、「反逆罪的」な事実の代わりに「愛国的な」嘘ををばらまくというメディアの役割についての話です。ですから『アメリカ 2014』で、あらゆるものの中で最も破壊活動的かつ反逆罪的行為は、法律上、定期的な「緊急放送」を全ての国民が見なければならない、政府の強制的「常時放送」衛星チャンネルへの、レジスタンスの不正侵入です。レジスタンスがチャネルを乗っ取って、舞台をアメリカにして、主人公のウインストン・スミスがBBC用に台本を書いた「1984年」のリメーク版をテレビ・ラジオ同時放送し、反対意見のメッセージを広める情報コマーシャルまでも合わせて放送してしまいます。

BuzzFlash: アメリカのマス・メディア、いわゆる「自由市場の独立」メディアが、実際は、かつてソ連で機能していた一つの巨大なプラウダのようなものだという時代に暮らしているというのは、ちょっと皮肉なものがはありませんか? 要するにアメリカのマス・メディアは、大部分、党路線に従っています。

ジョナサン・グリーンバーグ: アメリカのメディアには、まだソ連では許されることがなかった独立したレポートをする余地が残っていると言えると思います。けれども、客観的だなどと信じているソ連国民はほとんどいなかったソ連の露骨なメディア支配よりも、メディアは確実に、巧妙かつ狡猾に、様々な理由から「一つの巨大なプラウダ」の方向に向かっていると思うのです。一方で、多数のアメリカ人は、メディアの主要な役割は真実を報告することだと未だに信じているのです。

我が国では、独自に真実をレポートするというメディアの勇気が、これまでそうであったよりずっと少なくなっています。かつては独立していたメディアが益々巨大企業によって所有されつつあることが、この主要な原因だと考えています。株主の短期的利益を最大化するという法律上の目的に企業が従えば、国民に情報を知らせるという理想は棚上げになります。

事の背後に迫って状況の真実を報告しようとすることの資本利益率はどうでしょう? 私は、一ダース以上の全国的な雑誌に、過去20年間にわたって、特集記事を書いてきた調査報道記者です。20年前は雑誌に「硬派」記事を載せてもらうことが今日よりずっと容易でした。古い友人で、知る人の中では受賞もした最良のレポーターが、働いている巨大ニュース企業からやっかい者としか見られていないケースがありますが、その会社は何度か訴えられており、例え彼が毎回、事実しかレポートしなくとも、会社はそうした訴訟では「収益」が得られないと考えているためです。事実をレポートすることで、政権と反対の立場に立つことになると、記者としてのあなたの親会社への「アクセス」は減り、「著名政界人達」とのインタビューが出来なくなることを意味しています。我が国の有名人指向文化の中で、権威筋に異を唱えてどんな利益があるでしょう?

そこで、十億ドルもの予算の極一部を、実際に大衆の為に真実を突き止め、報道する義務があると感じるのではなく、メディア企業は通常、責任を回避して、「あらゆる記事に賛否両論を載せる」というジャーナリズムのやりかたをとるのです。これが、あらゆるニュースを30秒の抜粋ビデオという愚劣なものにしてしまうことと同時平行しておきるのです。文脈や真実は意味がなくなり、これがどういう結果になるかを見るのには10年先の我が国の未来を想像する必要はありません。

カール・ローヴが吹き込んで、執拗なまでに繰り返された、いずれもでっちあげ発言なのですが、ケリーが「兵士の防弾チョッキ用の870億ドル支出に反対した」或いは「アメリカがいつ参戦するかを国連に決めさせる。」と言ったという「ニュース」を見てみましょう。ケリーが本当は何をしたのか、言ったのかを報道する代わりに、恐らく80%のアメリカ人が見たり読んだりするであろう30秒キャンペーンのニュース報道はこんな感じです。「チェイニー副大統領は今日、テロリスト攻撃から国を守る方法として何が最適かという点で、ジョン・ケリーは誤っていたと述べた。ブッシュ大統領は、敵による攻撃から我が国を守るに当たって、決して国連に拒否権など与えない、と彼は述べた。」ケリーのキャンペーンのあるスポークスマンは、ケリーがアメリカ軍にアメリカを守れと命令を出す前に、国連をリトマス試験にかけるようなど考えたことがないと否定しています。

全てのニュースを30秒の「彼は言った/彼女は言った」に単純化し、メディア企業としての利益を、本来公共情報であるべきものへのアクセスを提供するという政府の「厚意」と結びつけてしまうのは、ビッグ・ブラザーの掌の上で踊らされてしまうことです。そうすれば、政府にとって、メディア支配が単純になるためです。全ての情報に対して「戦時」に、二つ単純なバケツへのレッテルを、一つには「愛国的」というレッテルを貼り、もう一つには「反逆罪的」というレッテルを貼るのです。これは「戦時において」(そして共和党右派が権力を掌握し続ける限り、永遠の思考力を奪い去る戦争の中で我々は暮らすのですが)、情報に「愛国的」或いは「反逆罪的」とレッテルを貼る権力から、「反逆罪的」情報を非合法化してしまう権力へと至る道への非常に小さな一歩です。

これに対する解毒剤は、国民に真実を伝えるという使命を持った独立したメディアなのです。ところがその代わりに存在しているのは、プラウダのように検閲はされてはいなくとも、ジャーナリストとしての出世、編集者としての出世、キャスターとしての出世、或いは企業利益といった、市場の力による自己検閲を経た真実なのです。そうなると、一体誰が電子投票装置が2004年の大統領選挙にどのような影響を与えたのかという報告をするでしょう?

BuzzFlash: 原作の『1984年』は、スターリンのソ連統治に関わる架空の未来像でした。あなたの『アメリカ 2014』は、絶え間ない、終わり無き「テロに対する戦争」を進めている、やや遠回しに表現したブッシュ政権のお話です。我が国は、民主主義の装いをしていても、実際は全体主義国家だというのはちょっと皮肉ではありませんか?

ジョナサン・グリーンバーグ: もしもこの国が全体主義国家だったなら、BuzzFlashを読んでいる何十万人という人々はBuzzFlash.comを訪れたというだけの単純な破壊活動のかどで、明日にも逮捕され、その人たちは、あなたや私と刑務所で一緒になるはずです。つまり、我々の状態はまだそこまでは行っていないわけで、少なくとも現時点ではまだ。

私の本で描いた全体主義国家としての現代アメリカは、今から10年後に起きるものです。ゆっくりと、故意に、静かに、ナチの上げ足歩調の方向へと行進していると申し上げたいのです。しかも、そうなるにはさほどのことは必要でないと思えて、私は気が気でないのです。

わずか6ヶ月前に本を書き終えたばかりなのに、未来派的なシナリオのいくつかが既に実際に起き始めているというのは、私にとって驚異的です。ブッシュの再選はその一つですが、これは意外なことではありません。それでも今日、フォックス・ニューズがすべてのクリア・チャンネル・ラジオ放送局の主要情報源だというのを読みました。何か『アメリカ 2014』の中に書かれていることに似た言及がありました。更に数週間前、あらゆる連邦のドラッグ違反を強制的な最少十年の禁固で罰することができるようにしようとする上院の法案についての記事を読みました。これは恐らく、連邦の土地における、或いは空港でのいかなる量のマリファナ所持も含むでしょう。私は本の中で、2006年の投票日に、選ばれた投票所での毛髪断片マリファナ・テスト結果が陽性である人に対し、十年間という連邦の強制的最小限の判決を適用して、1500万人の投票権を持った国民から、全体主義的国家が選挙権を剥奪する様子を予言しました。想像してください、十年間、裁判所の裁量無しなのです。あらゆるドラッグ違反に対して。友人の一人が私の本を読んで言いました。「そんなことは絶対おきっこない」。けれども、そのための基礎は既に上院の法案に埋め込まれています。十年間、重罪の記録によって、多くの州で二度と投票できなくするのです。

この小説を書くにあたって、非常に興味深かった本の一冊は「私は証言する」ナチ時代の日記[1933-1945]、ヴィクトール・クレンペラー著(邦訳大月書店1999年刊)です。これは素晴らしい作品で、全体主義的権力を獲得するまでの過程で、反対する人々を抑圧し、命を奪う為に、ナチが徐々に取った段階を詳細に描いています。

現代とファシズムが権力を獲得した時代の間に多数の気になる類似点が見られます。現政権は、憲法が国家の基盤と言うより障害であると明言しています。ブッシュの徒党は、国際的組織や国際法を、事実上反アメリカ的だとして糾弾し、事実上ジュネーヴ協定から離脱した最初の主要署名国となりました。ブッシュ支持者は事実上グアンタナモ湾や、アブ・グレイブ、或いはアメリカの刑務所における拷問などは気にかけておらず、イラクでアメリカ兵士によって奪われている民間人の生命は、そのような殺人を旗で包むことができる限り、明らかに取るに足らないことだと主張しています。また事実上ブッシュが行うあらゆる主要な行為は「神の摂理」によって正当化され、彼は聖なる十字軍を率いています。ブッシュは、ヒトラー同様、彼を不可謬にしてくれた神以外の誰にも責任を負いません。

何百万人の原理主義者達がそうしているように、もしあなたがこの主張を支持するのであれば、ブッシュと彼のなすこと全てを信じなければ、神を信じていないことになるのです。これが、教会と国家の分離の元にうち立てられた国家においておきているのです。

この分離を大切にし、我々の言論、報道と集会の自由を守る、我が憲法の強力な第一修正条項に対して、多くのアメリカ人がほとんど評価していないことを悲しく思います。国民の半数以上が第一修正条項全体を戦時において喜んで停止するという世論調査を読んだことがあります。

全体主義的な国家を我々にもたらすのに何が必要なのでしょうか?本の中では、「汚れた金曜日」と呼ばれるアメリカに対する大規模な生物学的なテロリスト攻撃について書きました。これは株式市場の大暴落の触媒であり、イスラム教諸国に対してより大規模な戦争をしかけ、あらゆる市民的自由を骨抜きにすることです。私は本当にこうした形の攻撃が、この国でもまた多国でも、決して起きないことを願っています。しかし、それが万一我が国で起きたなら、アメリカ憲法と我々をビッグ・ブラザー政府から守ってくれる抑制と均衡は、本当に四面楚歌となるでしょう。

この政権がビッグ・ブラザー警察国家を創り出す為に、そのような悲劇、或いは幾つかの悲劇を利用すると私は思っているでしょうか? 大規模なテロリスト攻撃の後、大半の「赤い州」のアメリカ人が、そのような権力掌握を支持するだろうと、私は思っているでしょうか? 「危機」の時に際し、法的手段によって恫喝されたら、大手メディアに残された独立性はおしまいになると私は思っているでしょうか?" ブッシュ、チェイニー、ローヴとゴンザレスが「アメリカを防衛」するのに必要と判断した、事実上のいかなる新「緊急」大統領執行権をも最高裁判所は支持するだろうと私は思っているでしょうか?

悲しいことに、この全ての問いに対する私の答えは「はい」なのです。

BuzzFlash: ソ連の場合同様、アメリカも、ご本の中では、「党」に対する忠誠心、奉仕と財政的貢献で評価される、特権を持ったエリートのインサイダーのものになっています。もしあなたが「リーダーシップ」に対する忠臣でなければ、国家の敵なのでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: リーダーシップという視点からすれば、そうです。主人公、ウインストン・スミスは、国家に対して裏切りとみなされる行為をおこなった時、彼はそれを学ぶのです。彼はその為に逮捕され、死刑を宣告されるのです。全体主義国家には、裏切り、或いは異議を唱える余地などありません。

胃が余りむかむかしていない時には、ラッシュ・リンボーやシーン・ハニティといったラジオ扇動家の話を10分聞いています。彼らにとって、異議を唱えることは裏切り者になることなのです。実際、問いただすことは、反逆罪と同じなのです。ヴェトナム戦争の頃、反動的右翼はよくこう言っていたものです。「アメリカを愛するか、でて行くかだ」我が国は、神によって任命された絶対に誤らない王様によって統治されていると彼らが信じていると思うほかありません。

私は、それがあるべき民主主義だとは思いません。異議申し立てをすることは愛国的なことであり、我が国は権威を疑うところから建国したのだと考えています。

BuzzFlash: BuzzFlashに書いてくださったゲスト評論の中で、認知に関する不一致とオーウェルの「ダブルシンク」という概念について書いておられます。アメリカ人は今日「ダビャシンク」の犠牲になっているとお考えでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: 少なくとも6千万人の人々はそうです。この政権の失敗は驚愕ものです。ブッシュは警告のメモを受け取ってからも、テキサスのクロフォードで夏期休暇を一ヶ月とったままでした。クリントンは毎週会っていたのに、彼はホワイト・ハウスのテロ対策専門家リチャード・クラークと決して会見しませんでした。差し迫った攻撃に関する無数の警告に対して、もっと色々できていた筈なのです。もちろん、ゴアが大統領であったなら、弾劾手続きが9月12日に始まっていたでしょう。ブッシュはそうではなく、実際に起きたことについての調査を妨害し、資金を止めようとし、そして奇跡のように「英雄」として出現し、大半の投票者がテロリズムに対する苦闘に対して「信任」したのです。

「ダビャシンク」だけが、彼の過ちに満ちた履歴にもかかわらず、なぜおよそ6千万人もの人々が進んでブッシュを再選したのかを説明できるでしょう。

BuzzFlash: BuzzFlash向けの批評記事中で、オーウェルが「異端中の異端は、常識だった」と言っていることを引用されています。そう!実に的を射ておられます。これは2000年3月に我々がBuzzFlashを立ち上げて以来ずっと行ってきたことの要約のように思えます。共和党員達は、酔っぱらいの詐欺師が運転する小型トラックから投げられる空のビール缶のように、傾きながら疾駆する民主主義の窓から常識が投げ捨てられてしまったような、ある種の別世界を創り出しました。『アメリカ 2014』には、常識の余地はあるのでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: きちんと職を確保し、「愛国的国民」であろうとするのであれば、その余地はありません。常識という異端に固執する人々は、『アメリカ 2014』の中では、他の2千万人の元国民達と同様に、極めて豊かな党献金者達が経営する、民営化された強制収容所の奴隷になって終わりです。多くのゲイやレスビアンや、このオーウェル風未来の中で、多くの進歩的な人々がしたように、国から逃れてカナダやヨーロッパやコスタリカに行くという良識が無い限りは。

本の中で、塀で囲まれた都会のゲットーにある秘密の「レジスタンス」コミュニティの中で、常識は何とか持続しつづけています。政府に届け出て、どこに行くにも真っ赤な「Sマーク」を付けていなければならない「破壊活動分子達」に対しては、ある種の思想の自由が認められます。こうした異端者は、権威にあえて異論を唱える連中への見せしめとなっています。彼らは職につけず、愛国的国民に話しかけることもできません。そして、大半の破壊活動分子達にとっては、国家安全保障局が自分たちに対して、処刑に値する違法の行為や言動をかぎ出すのも単なる時間の問題に過ぎません。

BuzzFlash: それでも『アメリカ 2014』にはまだ何か希望が残されています。反逆者、民主主義や真実を目指す愛国者の地下組織があります。そうした人々について、また終わることのない「テロに対する戦い」を企画した連中が創り出した全体主義的オーウェル風国家から、彼らはどうやってまぬがれていられるのかお話ください。

ジョナサン・グリーンバーグ: 恐らく『1984年』と『アメリカ 2014』の最も大きな違いは、『1984年』では、レジスタンスが本当に存在するのかどうか決してわからない点です。けれども『アメリカ 2014』では、レジスタンスは実在し、しかも拡大しています。

『アメリカ 2014』では、政府はもはや、社会保障、メディケイド(州と連邦政府が共同で行なう低所得者や身障者のための医療扶助制度)や食糧切符、取り巻き連中に支払う為に何兆ドルも吸い上げ、戦争に資金を出し、増加する借金の債権を発行する為の資金を持ち合わせません。そこで国家安全保障局は、持たざる人々をわずかな一回限りの定額交付金で送り出し、過密な都市ゲットーの壁の中に閉じこめ、なんとか自活するにまかせるのです。ビッグ・ブラザーが管理する国家の「外部」で暮らす人々の中には、国家安全保障局によって処刑された反体制活動家の孤児として残された子ども達、逮捕され、強制収容所で働くように送られる2千万人ものアメリカ人の扶養家族がいます。

ゲットーの人々の大半は、年老いているか、非常に若い人々たちです。若者達はうんざりしていて、技術的に非常に優秀です。彼らは破壊的な国家安全保障局の無人飛行物体がゲットーに近づけないようにしておく方法を見いだしますが、麻薬の売人や銃砲の密輸業者や国家安全保障局の賞金稼ぎと共存できるよう、逞しくなる必要があります。若者達はコンピューターをハイジャックし、スレーブ・サーバーとして働かせ、外部から「神の合衆国」を助けようと試みている何百万人もの複数の国籍の政治活動家のフリーウエアを入手するのに使います。

BuzzFlash: もしも大手ニュース・メディア、特にテレビがホワイト・ハウスの宣伝装置の手足として機能し続ける場合、『アメリカ 2014』のようになるのを防ぐ可能性はあるのでしょうか? ブッシュ支持者の大半は、イラク戦争をとりまく状況について事実を知らなかったと指摘しておられるのですから。そうした人々は進んで騙されているのでしょうか、それとも単に騙されているだけなのでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: ブッシュに投票する人々は、自分たちの指導者を信じたがっているのです。多くの人々が、愛国心とは、我が兵士達を支持すること、我が軍隊を支持すること、最高司令官を支持することだと考えているように見えます。何であれ旗を振って、支持するように言われたものを支持するという傾向が余りに強すぎるため、進んで騙されるようになるのです。けれども彼等はアブ・グレイブの写真から目をそらせています。わが政府が拷問は拷問ではないと言えば、それは拷問ではないのだ、ということから目をそらせています。国連と国際社会がイラクを不当な侵略戦争だと見なしていることから目をそらせています。彼らは10万人もの無辜のイラク民間人がこの戦争のおかげで亡くなっていることから目をそらせています。こうした人々はあらゆる点で、ワールド・トレード・センターで亡くなった人々と同じ人間だということから目をそらせています。我が国が史上最大の債務国家になったことも、ドルが下落しつつあることからも目をそらせています。

人々の投票行動を操っている従順な大手メディアを単純に難詰しているのではありません。こうした情報は、我々の名を語って政府が何をやって来たかを進んで考えてみようとする人々なら誰でも入手が可能ですし、我が国民は、自分たちが投票した政治家、特に再選した政治家に対して責任を持つべきなのですから。

ホワイト・ハウスの宣伝装置や従順なメディアが、政府行動の醜い現実を見過ごしやすく加工しているとは言え、ブッシュ支持者の大半は、単に騙されているだけではなくって、進んで騙されようとしていたのだと言えるでしょう。

BuzzFlash: 『アメリカ 2014』の中で、技術は圧倒的な存在となっています。全体主義的政権は、国民について、あらゆることを知ることができ、どこまでも追跡できるかのように見えます。高度な技術は圧制の為のより進んだ道具を生み出すのでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: ええ。『アメリカ 2014』では、ビデオ・モニターが至る所にあります。政府の広報や、企業の製品宣伝を流している至る所にあるビデオ広告掲示板の背後には、国家安全保障局カメラがあり、それは人々の会話や、顔の表情さえも監視するコンピューターにデータを送り込みます。すべてのアメリカ家庭に設置されるべき双方向TVシステムを国民各人は勝手にいじらないというのが、憲法上定められた義務なのです。こうしたTVはあらゆる人々を監視しており、決して消すことはできません。

さらにレーザー銃を搭載した恐ろしい警備用無人飛行物体があり、これは連邦ビルの中では哨兵として機能し、国家安全保障局が指名手配した「逃亡者」で、殺害するように印がつけられた人々を追い詰めます。

反体制として生きるには厳しい世界です。しかし高度な技術はインターネット・サーバーや衛星放送をハイジャックし乗っ取る高度な技術をも可能にし、レジスタンス・ハッカーが自分達の為に利用するのです。

BuzzFlash: ブッシュ政権がそのほとんどの政策について慢性的に嘘をついている一方、大手報道機関はブッシュや彼に忠実な連中に対して決してけちをつけずにいるように見えます。実際、彼らの信条は、「嘘も五回言えば、真実となる。」というものです。そして、少なくともこの国民の半数に対しては、この戦略は有効なようです。一体どうしてブッシュ政権は、その嘘を説明する責任から逃れていられるのでしょう?

ジョナサン・グリーンバーグ: 第一に、我々はカール・ローヴの邪悪な才気を認めざるを得ないと思います。彼は政治宣伝家ヨーゼフ・ゲッベルスの現代の継承者で、現代の技術が自由に使え、しかも無限の資金があるのです。

この引用を他の人々も最近言及していることは知っていますが、ここでも繰り返す価値があると思うのです。1946年、ニュルンベルグ裁判を待ちながら、ナチの国家元帥ヘルマン・ゲーリングがインタビュアーに答えています。「もちろん国民は戦争を望んではいない...しかし...国民は常に指導者達の意のままにできる。それは簡単なことだ。国民に、彼らは攻撃を受けているのだと告げ、愛国心の欠如と国家をより大きな危機に曝していると言って平和主義者を非難するだけで良い。これはどこの国でもひとしく機能する。」

これは大手報道機関にも当てはまると思います。この政権は、テロに対する聖戦を、金持ち減税からジュネーヴ協定の回避に至るまで、あらゆることの正当化に利用しています。メディア業界の人々は会社の上司たちから「ゲリラ隊員」だと思われたいとは望んでおらず、まして反逆的だと思われたいなどとは望んでいません。大半の人々は単純に、調査をしたり、或いは政権の嘘を指摘することが自分の仕事だとは思っていません。連中は、株主達と自分たちの為に儲けようとしている芸人なのです。

BuzzFlash: 新たなオーウェル風アメリカ憲法を、ご本の巻末にお書きになっていますね。なぜそれが必要だと思われたのですか? アメリカはどの程度までこの文書を反映しているのでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: エール大学のロースクールで、調査報道記者の為の特別研究員プログラムの一環として一年勉強しました。私は憲法修正第1条と憲法について研究し、どれだけの言葉表現のひねりや、法的裁定や例外が、国の法律になっているかを学びました。そこで、本の「愛国的国民の権利と責任章典」で、全体主義的憲法とはどんな風なのか、アメリカ人に警告したいと思ったのです。

権利章典を構成しているそれぞれの修正条項の中のわずかな単語を変えるだけで済むのです。それで、全てが変わってしまうのです。例えば、「戦時に、大統領かその代理人」が、権利を有しないと決めない限り、国民はある種の権利を有する、といえば、国民は国家がそれを奪わない適切な場合にのみ権利を有することになるのです。

どれだけそういう状況に近づいているかですか? 繰り返しますが、まだそこまでは行っていません。けれども、その方向へ進もうとする小さな足取りは見てとれます。愛国法の諸要素は恐るべきもので、特に裁判所による捜査令状を必要とする、何世紀もの古い法的伝統をすっかり無視しています。また新任の司法長官が制定した、ジュネーヴ協定に対する「最高司令官」例外は、特に万が一次のテロリスト攻撃があった場合、大統領布告によって、我が最高司令官に法的権限を与えるという極めて危険な前例を造ってしまいました。

BuzzFlash: 最後にとても大きな質問です。御本をお書きになったわけですが、本や新聞を読むことがすたれつつあります。オーウェルは、真実が主に視覚的なプロパガンダで規定される世界を描きました。私たちは、いかなる瞬間においてもテレビとコンピューターが生成した画像が「真実」を規定する鍵を握るような、文字メディア以後の時代への敷居を既に超えてしまったのでしょうか。マス・コミュニケーションを支配する個人は、たとえそれが嘘に基づいていても「真実」の定義を支配するのでしょうか?

ジョナサン・グリーンバーグ: 『1984年』でオーウェルは「過去を制御するものは、未来を制御する。現在を制御するものは、過去を制御する。」と書きました。

私たちは文字メディア以後の時代に近づいています。そこに、TVニュースをくだらないものにしたり、30秒の抜粋ビデオやらが入り込むのです。嘘を使って「真実」を定義するという好例は、大統領選挙キャンペーン中での、『真実を求めるスイフト・ボート「退役軍人」』(Swift Boat Veterans for Truth)の件です。嘘で塗り固めたこの資金潤沢な中傷キャンペーンは、勲章を授けられたヴェトナム戦争の古つわもののジョン・ケリーを、国を裏切り、戦争を長引かせた日和見の売国奴として、何千万人もの投票者に対して再定義することにまんまと成功したのです。一方で、強力な家族が、明らかに裏から手を回したおかで、戦争を避けることができたブッシュは、ブッシュの州兵履歴が情報公開法による要求で公表される一週間前、奇妙にも出現したたったひとつのささいな偽造メモのおかげで、メディアのボス連中から優しく取り扱われています。

もちろん、究極的な真実の再定義は、先月の選挙における電子投票装置の「順調な成功」というものでしょう。徹底的な調査を必要とする少なくとも半ダースの極めて疑わしい要素があり、現代アメリカ史中で最も重要な選挙と言われていたものの結果について、疑念を持ち得たはずなのです。監査可能な投票装置を義務づけていた筈の議会法案を阻止したこと、怪しい出口調査、電子投票装置を技術的に調査することに対する妨害、大いに疑わしい重要な地域における、事実上全ての偶然の不具合に至るまで、全てがブッシュに有利にはたらいたように見えます。

これに対して、「第四階級」(言論界)は、大切な独立メディア、この選挙が不正だったかどうかを探り出すのに必要な作業を行うことができる資源、人材、影響力を持った数十億ドルのメディア・コングロマリットは一体何をしているのでしょう?

彼らは、電子投票装置の話題を独自に調査することを拒否しただけでなく、これについて調べた人々についてレポートすることさえ拒否しています。一方で、雑誌や書籍やこのウェブ・サイトのようなものを読む能力を持った少数派は、大手メディアが「わが国家的ディベート」として演出する枠組みの外に追いやられています。これを変えるべきなのであれば、黙って耐えているわけにはいきません。

30秒の抜粋ビデオ、一分間のTV広告、或いは悪口言いたい放題トーク番組司会者の暴言からニュースを得る、文字メディア以後の大多数にとっては、2004年大統領選挙における新しい電子投票装置の驚異的大成功についてのニュースがあるばかりです。従って次回に何かを変えようとする圧力はほとんどなく、大企業メディアからはそうしたものは間違いなく皆無です。つまり、もし今回の選挙が乗っ取られたものであれば、次の選挙も同じことで、不正に操作される共和党多数派が増えるにつれ、事態は益々悪化するばかりで、ある種の共和党員が構想している一党独裁国家をもたらし、それが我々が生きている間つづくのです。

今から十年後『アメリカ 2014』のオーウェル風世界をもたらすことになるのでしょうか? 是非ともそうならないことを望んでいます。

BuzzFlash:お話を有り難うございました。

ジョナサン・グリーンバーグ:愉しくお話させて頂きました。

A BUZZFLASH INTERVIEW

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参考:

『アメリカ 2014』:オーウェル風物語、BuzzFlash Premium

なぜブッシュのアメリカは、オーウェルの『1984年』に似ているのか? ジョナサン・グリーンバーグによるBUZZFLASH ゲスト評論記事

神合衆国修正憲法、ジョナサン・グリーンバーグによるBUZZFLASH ゲスト評論記事

The Literature Network、on Orwell's 1984: http://www.online-literature.com/orwell/1984/

http://www.buzzflash.com/interviews/04/12/int04060.html

ビッグ・ブラザーを好きにさせられる2005/09/08 14:25

ビッグ・ブラザーを好きにさせられる ジョージ・ブッシュ、ジョージ・オーウェルと霊界通信

憲法学者に対する質問が一つある。現職大統領を、剽窃の罪で訴えることは可能だろうか?

ブッシュ大統領は、テロに対する戦いを遂行し、強大な国内保安体制を作り上げようとする中で、ジョージ・オーウェルのアイデアを、不法コピーとは言わぬにせよ、相当程度借用している。問題の作品は、組織的宣伝を行って危険な思想を取り締まり、必要にあわせて歴史を書き換えることで大衆を管理する政府を描いた予言的な小説「1984年」だ。本来、全体主義の悪についての警告として描かれたものであり、ハウツウマニュアル本などではない。

オーウェルが描いた類の専制国家とはかなり違っていることは認めるが、いささか気味悪くなるほど似ている共通点もいくつかある。

永久戦争

「1984年」では、国家は曖昧模糊とした千変万化の敵と永久戦争状態にある。戦争は主として、抽象的ながら、憎悪に油を注ぎ、恐怖をかき立て、自国の専制的な手口を正当化するのに都合の良い場所で行われる。

ブッシュのテロリズムに対する戦いは、ほとんど漠然とした状態になっている。大統領の決意は堅く、ミッションは明確だと言われているが、戦っている敵の姿は我々にはますますわからなくなりつつあるようだ。オサマ・ビン・ラディンとアルカイーダに対する戦いとして始まったものが、あっという間に、アフガニスタンに対する戦いに変貌し、それが「悪の枢軸」に対する厳しい警告となり、50から60か国のテロリストを狙うものとなり、そして今や対イラク大軍事作戦が始まった。この戦争で、何をもって勝利とするのか明らかではないが、ブッシュ政権がはっきり言っているのは、この戦争は「無限」に続くということである。

真理省

小説「1984年」で、政権党の組織的政治宣伝の機関として機能する真理省は、戦略的目的に合った嘘を広めるばかりでなく、歴史を常時書き換え、歪曲する。これはブッシュのホワイトハウスでは、きわめて日常茶飯事となり、大統領演説記録は大統領の失言をぬぐい去ることがお決まりとなり、9月11日以前の諜報機関による警告は、改作されるたびにむらが増し、ブッシュの過去の財務取引を巡る事実は絶えず改訂されている。

嘘をばらまくという意図について、ブッシュ政権は驚くほど正直だ。例えば2月には、ペンタゴンは世論を操作し、軍事的目的を進めるため、海外で虚偽のニュースと情報を流すための戦略的誘導局を創設すると発表した。大衆の抗議に対し、ペンタゴンは、その役所を閉鎖するとと言ったが、これは虚報をばらまく予定だと発表した役所からのものでなければ、よりもっともらしく聞こえたニュースだ。

無謬の指導者

あまねく存在する全能の指導者ビッグ・ブラザーは、全支配権を掌握し、人々の無条件の支持を得ている。彼は崇敬されると同時に恐れられており、国家の懲罰が恐ろしいので、誰も彼に対してあえて思い切って意見を言ったりはしない。

ブッシュ大統領はそれほど危険な人物ではないのかも知れないが、彼はより強大な権力への欲望をほとんど隠そうともしていない。独裁者だったら物事がどんなに簡単だったろうか、と彼が三度以上も言及したのは気にしないことにしよう。

政府の一部門が余りに強力になりすぎるのを防ぐため憲法によって確立されているチェック・アンド・バランスの多くを捨て去って、ブッシュは既にニクソン以来最強の行政権を実現してしまった。彼の支持率はかなり高率のままであり、彼の手下達は無謬のイメージを作り上げるべく奮闘している。

オハイオ州で行った最近のブッシュの卒業式演説ほどあからさまなものはない。その中で学生達は、演説に抗議行動をしたら、逮捕され除名されると脅されたのだ。学生達は「万雷の喝采」をするよう強いられ、事実そうした。

ビッグ・ブラザーは監視している

双方向テレスクリーンを使って、党の政治宣伝を放送すると同時に人々のあらゆる動きを監視して、ビッグ・ブラザーの不断に警戒を怠らない目は、オーウェルの全体主義国家市民を見張っている。

その技術はまだ実現してはいないかも知れないが、公的なビデオ監視は、取り締まり、スポーツ・イベントから、公共の海岸に至るまで大流行で、カメラは至る所に設置されている。

ブッシュ政権は、TIPS作戦とあだなをつけられた計画-つまりテロリズム情報と予防システムの一部として、いかなる疑わしい行動についても報告するよう、何百万人ものアメリカ人を採用し、警察にとって更なる目、耳として働く市民スパイの組織を作ろうという計画も発表している。

慌ただしく可決されたアメリカ合州国愛国法のおかげで、司法省は、電話会話、インターネット利用、業務取引、図書館閲覧記録を監視するという、全面的な新しい力を手に入れた。何よりも、司法当局は捜査の為の面倒な、「相当な理由」など思い煩う必要がなくなったのだ。

思想警察

「1984年」に描かれた、常に存在する思想警察は、意見を異にする連中を撲滅し、レジスタンスを探し出す任務を持って、あらゆる異端、あるいは反秩序的な可能性のある思想を入念に監視した。

ブッシュ政権は今のところ思想犯罪を訴えてこそいないが、テロリズムに対する戦い、或いは祖国防衛にあえて疑念を呈しようとする人間は誰でも、直ちにその愛国心を問われることになる。

例えば、司法長官ジョン・アッシュクラフトが、その反テロリズム施策に対する批判に答えるやり方を見てみると、政府への反対者は、「ひたすらテロリストを助けるだけ」で「アメリカの敵に弾薬を渡すもの」だという。

今や消滅した『Political Incorrectness=差別的表現』のホスト、ビル・マハールが、過去のアメリカの軍事行動を「卑怯だ」と言った後、ホワイト・ハウス報道担当官アリ・フレィシャーがアメリカ人に告げた峻厳な警告は、更に薄気味悪いものだった。アリ・フレィシャーはこう言ったのだ。「全てのアメリカ人は、自分たちが言うこと、することに配慮するよう注意を喚起したい。今はそんな所説を述べている時節ではないのだ。そんな時節は決して存在しない。」

アメリカを、オーウェルが警告したような、戦争は平和で、自由は隷属で、無知が力であると見るような社会にするには一体どれほど手間がかかるのだろう? それは一夜にして起きるのだろうか、それとも、人々の合意によって自由が次第に浸食されて行くものなのだろうか?

我が国は戦争状態にあるので、たいていのアメリカ人は、より大きな安全の為に自らの自由の多くを進んで犠牲にすると言うのを、常時思い起こさせられている。

我々は、政府を盲信するように言われており、大半の人々は愛国的な熱情からそうして来た。だが政府がそうした信頼につけいって、民主的社会の特徴である異議申し立ての自由を根絶し始めるのであれば、我々は引き返すことが可能なのだろうか?

「1984年」では、人々の心に対する政府の管理が極めて強力なので、結局誰もがビック・ブラザーを愛するようになったのだった。恐らくは我々も皆やがてそうなるのだろう。

Daniel Kurtzmanは、サンフランシスコのライターで、元ワシントンの政治記者。

これは、2002年 8月26日付けの文章Learning to love Big Brotherを「勝手に」翻訳したものです。 http://www.tompaine.com/feature2.cfm/ID/6243

http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/orwell/learntolovebb.html より転載。

オーウェルならブッシュ政権を愛したろうか?2005/09/08 14:29

オーウェルならブッシュ政権を愛したろうか?

Jon Eekhoff 2004年4月5日

1948年にジョージ・オーウェルが「1984年」を書いた時、ロシアのヨシフ・スターリン体制をビッグ・ブラザー政府のモデルとした。圧政的なビッグ・ブラザーは常に監視しており、常に戦争状態にあり、そして常にオセアニア(イギリスとアメリカ)国民に対する情報の流れを管理している。

どうもどこかで聞いたような気がする、という人はいないだろうか? そう。「人は、我々の味方であるか敵であるかの、どちらかだ」という主張と立場を同じくしないものにとり、ブッシュ政権はビッグ・ブラザーと驚くほど良く似ている。

愛国法から見てみよう。(オーウェルには、この名称のいかにもダブルスピーク的なところが気に入ったことだろう。) 愛国者は、監視されることを甘受する。愛国者は、正しく振る舞い、アメリカ国旗を正面に立て、言われた通りのことをしている限り、心から愛するビッグ・ブラザー/ブッシュ政権の連中を恐れる必要など何もない。そうした規則に従わない連中が連行され、容疑なしに拘置され、代理人なしに尋問されるのだ。「1984年」の思想警察は、オセアニアの人々に対し、同じ様な形の政府管理を採用している。

国土安全保障省/愛情省は、外部の敵という悪から我々を守るためにある筈ではなかろうか? 私たちは、ずっと安全だと感じていられるはずではなかろうか? もし国土安全保障省長官トム・リッジとその部下連がいなければ、邪悪な敵が我々を殺し、破壊してしまうのではなかろうか? そうした恐怖の類によって、安全性といわれるもののために、我々は権利を放棄するようになっている。そう、そこで我々は安全でいられる限り多少の自由をあきらめたのだ。私が覚えている範囲では、9/11以前には、かなり安全な状態の期間を謳歌していたような気がする。 そこであなた方がこう言う声が聞こえてくる。「時代が違うさ。当時我々はテロリスト攻撃の目標ではなかったのだ。だが今は攻撃目標だぞ」 そう言いながら、海外での「テロリズムとの戦い」に巨額のドルを注ぎ込み続けている間に、合州国にあって我々は益々借金にはまりこむ。恐怖が支配している限り、我々はインフラストラクチャーが悪化してゆくのに目をつぶっていられるし、ビッグ・ビジネスが暴走するのにも目をつぶっていられるし、環境がテロリズムの二の次とされるのを許し、もともと我々の生活の一部だったあらゆるサービスに対して、益々多くの金を払い続けることもできる。

恐怖によって、ブッシュ政権は大量破壊兵器を発見する為にイラクを攻撃する権利を得、戦争目的を究極の善の一つへと変更した。我々はイラクの人々を自由にしたかったのだ。我々は中近東に民主主義国家を作りたかったのだ。我々は世界から、大いなる悪を一掃せねばならないのだ。

「1984年」では、政府は変わり続ける敵と常時戦争状態にある。オセアニアの人々は、誰が敵で、誰が同盟側なのか忘れ始めている。ブッシュ政権は、誰が敵で、誰が敵でないか、はっきりと線引きしてくれた。悪の枢軸として、誰が良い連中で、悪い連中なのかはっきりしているだろうか? フランスは何にあたるのだろう? サウジアラビアはどうだろう? (9/11テロリストの大半はあの国出身だ。) 「有志連合」以外の連中は、皆敵なのだろうか? ブッシュ政権の連中が我々に語りかけている事よりも広い視野で考えて見ると、この境界線はやや曖昧になる。

一つ確実なのは、我々は期限なしで悪との戦いをしているということだ。心配には及ばない。我々はもう戦争状態に慣れてしまった。軍関係であったり、愛する人がイラクにいない限り、この戦争で生活に一体どんな影響があったろう? 私は今でも仕事に出かけている。私は今でも子どもを学校に送って行く。私は今でも愛国的義務を果たし、ウオルマートでの買い物に出かけている。大半のアメリカ人にとってこの戦争は、夜のニュースが戦死者数を数え上げるのを我慢する以外、全く、あるいはほとんど生活に対して影響をもたらしていない。我々は本当に「戦争は平和だ」(ビッグ・ブラザーの三つのスローガンの一つ)という情況に至ってしまったのだ。

ブッシュ政権は国内の自由な情報の流れも制限している。マスメディア独占のおかげで、見かけが派手なニュースまがいのものが大量に溢れているが、評論家連が二派にわかれ、わめいて議論を戦わす以上の内容が一体どこにあるだろう? ニュースは、要するにセンセーショナルに表現されたヒステリーに過ぎず、報道価値などないのだ。ブッシュ政権の連中は、これまでのどの政権より、我が文化のこの要素を存分に利用している。イラク侵略戦争中のメディア利用は実に天才的だった。エンベッドされたジャーナリスト達は、軍と一緒に進みたい余りに、戦争を客観的に見る能力を喜んで犠牲にした。これはメディアが余りに愚鈍にして意識しそこねていた、一種の検閲であったが、素晴らしいテレビ番組ができるということで、誰もあえて異を唱えようとはしていないようだ。

ブッシュ政権とメディアの関係をより深く考えてみると、トップから直接情報を得ることが実際にはどれほど大変なことかが分かり始める。ブッシュ大統領は、報道陣が自分に直接質問することをいやがっているが、彼は常に、自分の大農場で皆の方を向き、にっこり笑って手を振って、シャッターチャンスを設けている。こうしたあらかじめ用意されたニュースは、取材が楽な上に、ブッシュ政権にとって必要なものだけを提供してくれる。つまりニュースは形だけで、なんら本当のニュースではないのだ。オーウェルなら、ニュースをこうして矮小化する手腕を称讃したことだろう。ビッグ・ブラザーは、ニュースを矮小化し、オセアニアの公用語であるニュースピークを通して思考を矮小化させた。ビッグ・ブラザーは、ブッシュ政権に比べ、確かに人々に対する直接的な権力を持っている、だが我々が議論できる範囲は制限されているし、制限され続けるだろう。

「1984年」の最後に、オーウェルの主人公ウインストン・スミスは、愛情省による拷問を受けて2 + 2= 5であることを認めるにいたる。そこで彼は殉教者としてではなく、ビッグ・ブラザーの信徒としてロンドンの町に戻される。とうとう独自の思考を諦め、ビッグ・ブラザーを愛した時、ウインストンは殺されて小説が終わる。小説のこの寒々しい結末は警告として意図されていた。政府に余り多くの権力を与えるべきではないのだ。我々は、政府が与えるものなら何でもそのまま呑み込む、考えることを放棄したぐうたらの身には、決してなってはならない。自分たちの利益を、我々の利益よりも優先するような政府に、決して満足してはならない。

オーウェルなら、ブッシュ政権の政策にはあきれかえったことだろうし、我々もそうあるべきだ。

Jon Eekhoff氏御本人の承諾を得て翻訳。元の記事は以下。 http://www.orbusmax.com/oped/jone_040504.html

http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/orwell/jone_040504j.html より転載

宗主国の政治は、属国の鏡なのでしょう。