アニメ『動物農場』2009/07/03 00:55

『動物農場』本編だけでなく、解説の詳しさに感心。

『諸君』2009年3月号に、『動物農場』にまつわる宮崎駿監督発言を批判する記事、山際澄夫「宮崎駿監督、どさくさ紛れの嘘八百はやめてください」というのがあった。お金と時間がもったいないので買わなかったが、一応読んでおくべきだったと反省。

しかし、下記ブログ記事を読む限り、想像通り、お金と時間をかけるべき文章ではなさそう。
読んでいないので、申し訳ないような気もするが、ここは「山際澄夫さん、どさくさ紛れの嘘八百評論はやめてください」と書かせていただこう。

七詩さんのHP 「格差の感覚」
http://plaza.rakuten.co.jp/aisya96/diary/?ctgy=8

動物農場 おとぎばなし 岩波文庫版2009/07/18 23:43

待望の翻訳本、ようやく刊行された。
川端康雄訳
http://www.bk1.jp/product/03130430
(角川文庫クラシックスに、既に翻訳がある。こちらで長年愛読してきた。http://www.bk1.jp/product/00035423

カバー裏には、こうある。

引用始め

動物農場
「すべての動物の平等」を謳って産声をあげたアニマル・ファーム動物農場。だがぶたたちの妙な振舞が始まる。
スノーボールを追放し、君臨するナポレオン。
ソヴィエト神話とスターリン体制を暴いた、『一九八四年』と並ぶオーウエルの傑作寓話。
舌を刺す風刺を、晴朗なお伽話の語り口で!

引用終わり

「ソヴィエト神話とスターリン体制を暴いただけ」であれば、とっくにこの本、忘れさられていたのではないだろうか。
「ツアー体制を打倒した、革命家達による政権が、結局は、旧体制に代わって、国民の抑圧・支配を継続する。」ことだけが書かれているわけではないだろう。
このお話、かつてアメリカCIAが、資金をだして、イギリスでアニメにして、反ソ連キャンペーンを狙った過去がある。今や、ブーメラン現象。資本主義国家における「政権交代」のいんちきさをこそ描いているように読める。
2008年のアメリカ大統領選挙で起き、この夏、日本で、これから起ころうとしている政権交代なる、恐ろしい現実に、個人的には、読み替えている。動物農場における、支配者の交代と同様に、支配者の交代だけで終わってしまうという未来だ。つまり、

「すべての動物の平等」を謳って産声をあげたアニマル・ファーム動物政府。
だが民主ぶたたちの妙な振舞が始まる。

これだけぞっとする古典スリラー?が、わずか560円+税。
しかも、岩波版、詳細な注だけでなく、付録1 出版の自由 付録2 ウクライナ語版のための序文、まで入っている。

「出版の自由」、日本のマスコミにもそのままぴったりあてはまる。

新訳版 『1984年』2009/07/21 00:24

大変な話題になって、大いに売れているという『1Q84』。その題名の元になった?本を読もうとしても、旧版は絶版だった。困った方が多数おられたのではないだろうか?

この新訳、帯に「大きな活字で読みやすいトールサイズ」とある。
たしかに、わずかに背が高いだけなのに、文字の大きさがかなり違い、読みやすい。
(帯をはずすと、全体が、夜空のような表紙。)
トマス・ピンチョンの解説まで、ついている。
新訳で、初めて、本書を読む皆様がうらやましい。

ジョージ・オーウェル
高橋和久訳
ハヤカワepi文庫
定価(本体860円+税)

ピンチョンは、解説で、明るく、こう書いている。

ニュースピークは生き長らえず、標準英語に息づくヒューマニズムの思考は消え去ることなく、生き残り、最終的には勝利したらしいのだ。もしかするとその英語が代弁する道徳的秩序までもどういうわけか復旧したのかもしれない。

本当だろうか?
オバマ大統領の、チェンジは継続だった。
小泉元首相の、改革は破壊だった。

標準英語は生き長らえず、ニュースピークに息づく、アンチ・ヒューマニズムの思考が消え去ることなく、生き残り、最終的には勝利したらしいのだ。もしかするとそのニュースピークが代弁する非道徳的秩序までも勝利したに違いない。
と、素人には、思えてくる。

政権交代は、政権後退だろう。