「ロスチャイルドが世界政府のビッグブラザーになる」 真面目な「1984年」論2010/05/28 13:59

ロスチャイルドが世界政府のビッグブラザーになる」 表紙
『1Q84』という本の三冊目がでたが、これも先の二巻同様、大ヒットしているらしい。
一方で、その題名をつけるにあたって、考えていたであろう本、ジョージ・オーウェルの『1984年』も、それにつられて、大ヒットしている、という話しは聞いていない。
『1Q84』は読んでいない。一方『1984年』、非常に陰惨ではあるが、まるで現代のことを、予言した本のようだとずっと思っていた。
同じジョージ・オーウェルの本でも『動物農場』については、西川伸一教授による「オーウェル『動物農場』の政治経済学」ロゴス刊や、川端康雄教授による「動物農場」ことば・政治・歌」平凡社刊という、素晴らしい書籍がある。

『1984年』を扱った真面目な本が出るのを、首をながくして待っていた。
そして、ようやく菊川征司著「ロスチャイルドが世界政府のビッグブラザーになる」という本を見つけた。5次元文庫、徳間書店 2010/3刊。価格648円+税、『1Q84』より、はるかに経済的だ。

つまらない感想ではなく、本書の宣伝・要約文を列記しよう。帯・表紙カバーの折り返し・裏表紙の文章の写しだ。

帯には下記の文章がある。

国際金融資本家の最終計画-
全地球の金融属国化、ワンワールド、監視社会オーウェル『1984年』と村上春樹『1Q84』を踏まえた恐ろしき未来社会の超実態

「村上春樹『1Q84』を踏まえた」というが、実際には『1Q84』よりも、オーウェル『1984年』の内容と、現代世界、アメリカ、ソ連、中国、そして日本、対テロ戦争等の実態を考える記述の方が圧倒的に多い。『1Q84』については34-43ぺージで触れている。

読むにつれ、長いこと現代社会まるで『1984年』のようだと思っていたのは、被害妄想ではなかったと思えてくる。

表紙カバーの折り返しには下記文章がある。

鳩山由紀夫首相を支援していたのはビルダーバーグ。
さらに小沢金銭問題の背後には、
アメリカのビルダーバーグへの抵抗があった。
ワクチン接種は現代の〝踏み絵〝、
反政府分子を閉じこめる収容所もすでに完成。
双方向を謳った「地デジ」は、オーウェルが予見した監視装置テレスクリーン″に代用可能。
「地域経済の自由化」→「地域内の統一通貨」
→「連合国家」→「世界政府」
見せかけの言葉の裏にある、全体主義国家への恐ろしい狙い。


裏表紙には下記文章がある。

すでに世界政府への段取りは済んでいる!?オーウエルが警鐘を鳴らした全体主義国家が、地球規模で静かに生まれつつある。性欲まで管理される恐怖社会はすぐそこに。「階級社会は貧困と無知の上に成り立つ」とオーウエルは喝破した。自作自演の事件で恐怖を与え、不安を利用して民衆をコントロールするのは常套手段。政府とマスコミの巧妙な洗脳に騙されるな。世界政府の超管理社会を完成させないための必須サバイバルガイド。

30ページでは、そもそもジブリの宮崎監督がアニメ『動物農場』を大いに評価しており、、そのおかげで三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーとして字幕付きで日本で公開されたことが書かれている。

「あとがき」284ページの記述には諸手をあげて賛成。

引用始め

このまま7月の参議院選挙で勝とうものなら、日本は一党独裁の全体主義国家の道をひたすら歩んでいくのは間違いないと言わざるを得ません。
小沢が中枢にいる限り、民主党に政権を任せるのは非常に危険です。

引用終わり

ゾッとする事実が羅列されているため、読んでいて決して楽しくはない。それでも『1Q84』ではなく、オーウェルの『1984年』を読まれる際には、頭の体操用として、是非横に置いておかれるよう、おすすめしたい本だ。

ただし「オーウェル『動物農場』の政治経済学」のように、小説の文章と関連させて、過去・や現在の社会の動きを緻密に検討してはいない。
頭が化石化している人が読めば「トンデモ陰謀論」と非難する可能性もありそうだ。もちろん個人的には「トンデモ陰謀論」などとは全く思わない。

とはいえ、やはり『1984年』を『動物農場』のように、きちんと政治学の視点から読み解く、「オーウェル『1984年』の政治経済学」が出版されたら有り難く思う。

ところで、廃刊になった『諸君!』2009年3月号に掲載された記事、
エッ、「日本は『動物農場』」だって?宮崎駿監督、どさくさ紛れの嘘八百はやめてください 山際澄夫(ジャーナリスト)
一体どのような話だったのだろう。立ち読みをするつもりだったのに読み損ね、後悔している。

2010/5/29、下記の記事が一面にあった。いわゆるDPIの導入だ。
これこそ、権力者にとって、全国民の思想・嗜好を把握できる、夢の監視装置「テレスクリーン」だ。
名作『1984年』から30年遅れで、現実がとうとう本当のディストピアになる。 よく似た題名の本よりも、『1984年』こそ読まれるべきでは?

http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201005290356.html
「ネット全履歴もとに広告」総務省容認 課題は流出対策

以下、上記記事の一部を引用しよう。
引用はじめ

インターネットでどんなサイトを閲覧したかがすべて記録される。初めて訪れたサイトなのに「あなたにはこんな商品がおすすめ」と宣伝される――。そんなことを可能にする技術の利用に、総務省がゴーサインを出した。ネット接続業者(プロバイダー)側で、情報を丸ごと読み取る技術を広告に使う手法だ。だが、個人の行動記録が丸裸にされて本人の思わぬ形で流出してしまう危険もある。業者は今後、流出を防ぐ指針作りに入る。

中略

情報を突き合わせれば、他人に知られたくない持病やコンプレックスなどが特定される恐れがある。技術的にはメールの盗み読みもでき、憲法が保障する「通信の秘密」の侵害にもつながりかねない。こうした点から、米国と英国では業者による利用が問題化し、いずれも実用化に至っていない。

引用おわり。