「南太平洋」とYou've got to be carefully taught2006/01/20 20:20

ミッチェナーのTales of the South Pacific(未読)を元にした古典ミュージカル「南太平洋」をDVDで始めて見ました。見る前から「バリハイ」のメロディーだけはしっかり覚えています。噂に違わぬ名作。
「人種偏見」問題を取り上げていることは承知していましたが、歌にまでなっているとは知りませんでした。ミッチェナーの考え方をそのまま歌ったような内容にびっくり。時代を考えれば実に大胆な歌詞。

従軍看護婦のネリー・フォーブッシュは、島の農場主エミール・デ・ベックと恋に落ちます。彼の妻は現地の女性で二人の子供をもうけたあと、亡くなっています。
水上飛行機でやってきたケーブル中尉も、島の娘と恋に落ちます。
ネリーもケーブル中尉も、「人種偏見」から相手との「結婚」に踏み切れず二の足を踏みます。
農場主の申し出を受け入れられず、「感情的なもので」といってネリーは逃げ去ります。
そこで、農場主が「偏見は生まれつきではあるまい」とケーブル中尉にいうと、
ケーブル中尉が、「偏見は生まれつきのものではありません」といって歌い出すのです。
You've got to be carefully taught
「念入りに吹き込まれたんですよ」とでも訳すべきでしょう。

適当に訳してみるとこんな内容です。

憎しみと恐れは吹き込まれたものですよ
繰り返し吹き込まれたんですよ
小さな耳に焼き付くまで叩き込まれたんです
念入りに吹き込まれたんです!

恐れるように吹き込まれたものですよ
目の形が違う連中を
肌の色が違う連中を
念入りに吹き込まれたんです!

手遅れにならないうちに吹き込まれたものですよ
物心がつくやいなや
身内が憎む連中は皆憎むように
念入りに吹き込まれたんです!
念入りに吹き込まれたんです!

近くは、韓国、北朝鮮、あるいは中国、遠くはイスラムの人々などに対する関係もこの歌詞と無縁ではなさそう。歌詞では、さすがに「誰がどうやってその偏見を吹き込むか」は語りません。

「真実の報道ではなく、真実を隠し、偏見を吹き込むのが仕事。
巨悪を追うのではなく、目くらましするのが仕事。怪しい背景を知りながら
○○エモンを担ぎ上げておいて、土左衛門にするのが民放・大新聞の仕事。」
と、オーウェルならいったでしょうか?

You've got to be taught to hate and fear
You've got to be taught from year to year
It's got to be drummed in your dear little ear
You've got to be carefully taught

You've got to be taught to be afraid
Of people whose eyes are oddly made
And people whose skin is a different shade
You've got to be carefully taught

You've got to be taught before it's too late
Before you are six, or seven, or eight
To hate all the people your relatives hate
You've got to be carefully taught!
You've got to be carefully taught!

現代でもアメリカではコマーシャルで流れたりしているといいます。
http://www.roots-int.com/S-T/16/bbs.html

映画「南太平洋」サウンド・オブ・ミュージック二枚組がお得かも?「南太平洋」について詳しくはこちらのウェブが参考になります。

オリジナルの「南太平洋」、画面が暗かったり、褪色していたりするのがいやであれば、2001年のテレビ版ISBN 0-7888-2987-4が良いかも。オリジナル版を見た後では、配役がどうもしっくりしないような気はするものの、画面はクリア。テレビ版のお買い求めはアメリカDVD通販サイトでどうぞ。主演女優はグレン・クローズ。

http://www.asahi-net.or.jp/~ir4n-khr/booke/caravans.html#caravans
より転載