ジェームズ・ミッチェナーのSource -小説・人間の歴史2005/09/29 22:12

購入したのは何と1987年。 昨年読み始め、380ページあたりで中断。 この夏、気を取り直して読み始め、やっと最後の1088ページまで辿り着きました。

長い長い宗教弾圧と虐殺の歴史から現れる壮大なイスラエル建国物語ということでしょうか。 遺跡発掘の土地を舞台に、発掘順と逆に遺跡の下層から上層に向かって物語は展開します。 三大宗教発祥の地に生きた人々の歴史ですが、ヨーロッパやロシアも舞台の一部です。

トルコ統治時代の土地買収交渉の章が余りに冗長で、その部分を読むのに何日かかったか記憶にありません。 最初に書いてあった、狂言回し役の考古学者達のロマンスの経緯も、最後の章を読む時点ではすっかり忘れてしまっていました。日本語で読めたらどれほど楽だっただろうと思います。 調べてみると「小説人間の歴史」という題名で、河出書房から「三冊」本の翻訳がでています。 中野好夫他訳、1967年刊。(原書は1965年刊。) 古書をWeb検索してもほとんど見かけず、図書館データベースでも見つかりません。 私立大学の図書館にあったりするようですが、アクセス不可能なのが残念。 デジタル版を廉価で出してもらえないものでしょうか。

アメリカとイスラエルの密接な関係はよーく分かります。ミッチェナー作品中、アメリカで最も読まれている本のようです。さもありなん。 イスラエルとアメリカを、バチカンとカトリック教徒に例える記述はうまい物だと感心。

困難だが「明るい」未来を作りたい、という結末、65年当時の願望でしかなかったのかと残念。 その後40年間の展開が、結末の雰囲気と大きく違ったのは作者の罪ではないのでしょうが。

異教徒と間違えて同じ宗教の人々を誤って大量殺戮する「十字軍」のすさまじさ。 「宗教は剣呑」なのではあるまいかと、無宗教者は思うばかり。 長い長い宗教弾圧と虐殺の歴史は、そのまま継続している。拡大しているというべきでしょうか。 結末の雰囲気と大きく違う現状こそ、むしろ本書の素直な延長に思えてくるのです。

アマゾンでの書評は絶賛に近いが、イスラム諸国で本書は販売されているのでしょうか? その場合どのような評価になるのか大いに興味をそそられます。

宗教、「百害有って一利無し」なのではないだろうか、と貧しい一庶民は思うのです。 日本の現状も宗教を信じる人の議席が圧倒的多数。

「地獄への道は善意で敷き詰められている。」

http://www.samueljohnson.com/road.html

http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/booke/caravans.html から転載

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