Talking with Michener ― 2006/01/10 20:05
ジェームス・ミッチェナーの対話本を読んだ。
彼の作品、途方もない長編が多く、しかも何故か翻訳されていないことが多いので、苦闘しながら読んでいる。
一方、本書Talking with Michenerは、友人の作家、Lawrence Grobelが準備した質問リストに対して、ミッチェナーが率直に答えたものだ。必然的に、一つの話題についての文章は短く、テーマにそって全体が区分されているので、読みやすい。何より率直な回答につい引き込まれた。大作を読むより先に、こうした本を読んでおく方が、一種勢いがつけられるようにも思える。
わくわくさせられるアフガニスタンについての物語、Caravansを1963年に書いた彼、「パキスタンに亡命したアフガニスタン人を助ける組織の会長になったのは、生涯の過ちだった」と言う。
質問の中には、例のビルのかつての爆破事件や、オクラホマ・シテイの爆破の話に触れて、そうしたテロリズムは特例だったのだろうかというものまである。
ミッチェナーは、1971年に書いたThe Driftersの中で、そうした連中の登場をすでに予見していた、と答えている。
はっきりかきすぎる為に、大作の多くは当初、冷酷な扱いをうけたという。
「ポーランド」を書いたために、ポーランドに暫く入れなかったが、結局は、招待されて大歓迎されるに至った。
「Covenant」は、南アフリカの情勢を厳しく描いたため禁書になったが、結局解禁になった。
古代からイスラエル建国までの、あの地域の歴史を描いた「The Souce」も、学者連からは非難囂々だったが、結局は、イスラエル観光客招致に非常に寄与したと認められているという。
詳細な索引がついており、読み終わった後、ある件について、何と言っていたか確認したい時など、便利だ。一種のミッチェナー簡略事典のように利用できそうだ。日本の本では、こうした作りのものは殆ど見かけない。それほどの中味のない駄作ばかりというわけでもあるまいに。
アメリカの暴力を好む体質に対する反省も率直だ。ただし、あたかもあの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を思い起こさせるような、日本についての買いかぶりだけはどうしても頂けない。
彼の作品、途方もない長編が多く、しかも何故か翻訳されていないことが多いので、苦闘しながら読んでいる。
一方、本書Talking with Michenerは、友人の作家、Lawrence Grobelが準備した質問リストに対して、ミッチェナーが率直に答えたものだ。必然的に、一つの話題についての文章は短く、テーマにそって全体が区分されているので、読みやすい。何より率直な回答につい引き込まれた。大作を読むより先に、こうした本を読んでおく方が、一種勢いがつけられるようにも思える。
わくわくさせられるアフガニスタンについての物語、Caravansを1963年に書いた彼、「パキスタンに亡命したアフガニスタン人を助ける組織の会長になったのは、生涯の過ちだった」と言う。
質問の中には、例のビルのかつての爆破事件や、オクラホマ・シテイの爆破の話に触れて、そうしたテロリズムは特例だったのだろうかというものまである。
ミッチェナーは、1971年に書いたThe Driftersの中で、そうした連中の登場をすでに予見していた、と答えている。
はっきりかきすぎる為に、大作の多くは当初、冷酷な扱いをうけたという。
「ポーランド」を書いたために、ポーランドに暫く入れなかったが、結局は、招待されて大歓迎されるに至った。
「Covenant」は、南アフリカの情勢を厳しく描いたため禁書になったが、結局解禁になった。
古代からイスラエル建国までの、あの地域の歴史を描いた「The Souce」も、学者連からは非難囂々だったが、結局は、イスラエル観光客招致に非常に寄与したと認められているという。
詳細な索引がついており、読み終わった後、ある件について、何と言っていたか確認したい時など、便利だ。一種のミッチェナー簡略事典のように利用できそうだ。日本の本では、こうした作りのものは殆ど見かけない。それほどの中味のない駄作ばかりというわけでもあるまいに。
アメリカの暴力を好む体質に対する反省も率直だ。ただし、あたかもあの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を思い起こさせるような、日本についての買いかぶりだけはどうしても頂けない。
「南太平洋」とYou've got to be carefully taught ― 2006/01/20 20:20
ミッチェナーのTales of the South Pacific(未読)を元にした古典ミュージカル「南太平洋」をDVDで始めて見ました。見る前から「バリハイ」のメロディーだけはしっかり覚えています。噂に違わぬ名作。
「人種偏見」問題を取り上げていることは承知していましたが、歌にまでなっているとは知りませんでした。ミッチェナーの考え方をそのまま歌ったような内容にびっくり。時代を考えれば実に大胆な歌詞。
従軍看護婦のネリー・フォーブッシュは、島の農場主エミール・デ・ベックと恋に落ちます。彼の妻は現地の女性で二人の子供をもうけたあと、亡くなっています。
水上飛行機でやってきたケーブル中尉も、島の娘と恋に落ちます。
ネリーもケーブル中尉も、「人種偏見」から相手との「結婚」に踏み切れず二の足を踏みます。
農場主の申し出を受け入れられず、「感情的なもので」といってネリーは逃げ去ります。
そこで、農場主が「偏見は生まれつきではあるまい」とケーブル中尉にいうと、
ケーブル中尉が、「偏見は生まれつきのものではありません」といって歌い出すのです。
You've got to be carefully taught
「念入りに吹き込まれたんですよ」とでも訳すべきでしょう。
適当に訳してみるとこんな内容です。
憎しみと恐れは吹き込まれたものですよ
繰り返し吹き込まれたんですよ
小さな耳に焼き付くまで叩き込まれたんです
念入りに吹き込まれたんです!
恐れるように吹き込まれたものですよ
目の形が違う連中を
肌の色が違う連中を
念入りに吹き込まれたんです!
手遅れにならないうちに吹き込まれたものですよ
物心がつくやいなや
身内が憎む連中は皆憎むように
念入りに吹き込まれたんです!
念入りに吹き込まれたんです!
近くは、韓国、北朝鮮、あるいは中国、遠くはイスラムの人々などに対する関係もこの歌詞と無縁ではなさそう。歌詞では、さすがに「誰がどうやってその偏見を吹き込むか」は語りません。
「真実の報道ではなく、真実を隠し、偏見を吹き込むのが仕事。
巨悪を追うのではなく、目くらましするのが仕事。怪しい背景を知りながら
○○エモンを担ぎ上げておいて、土左衛門にするのが民放・大新聞の仕事。」
と、オーウェルならいったでしょうか?
You've got to be taught to hate and fear
You've got to be taught from year to year
It's got to be drummed in your dear little ear
You've got to be carefully taught
You've got to be taught to be afraid
Of people whose eyes are oddly made
And people whose skin is a different shade
You've got to be carefully taught
You've got to be taught before it's too late
Before you are six, or seven, or eight
To hate all the people your relatives hate
You've got to be carefully taught!
You've got to be carefully taught!
現代でもアメリカではコマーシャルで流れたりしているといいます。
http://www.roots-int.com/S-T/16/bbs.html
映画「南太平洋」サウンド・オブ・ミュージック二枚組がお得かも?「南太平洋」について詳しくはこちらのウェブが参考になります。
オリジナルの「南太平洋」、画面が暗かったり、褪色していたりするのがいやであれば、2001年のテレビ版ISBN 0-7888-2987-4が良いかも。オリジナル版を見た後では、配役がどうもしっくりしないような気はするものの、画面はクリア。テレビ版のお買い求めはアメリカDVD通販サイトでどうぞ。主演女優はグレン・クローズ。
http://www.asahi-net.or.jp/~ir4n-khr/booke/caravans.html#caravans
より転載
「人種偏見」問題を取り上げていることは承知していましたが、歌にまでなっているとは知りませんでした。ミッチェナーの考え方をそのまま歌ったような内容にびっくり。時代を考えれば実に大胆な歌詞。
従軍看護婦のネリー・フォーブッシュは、島の農場主エミール・デ・ベックと恋に落ちます。彼の妻は現地の女性で二人の子供をもうけたあと、亡くなっています。
水上飛行機でやってきたケーブル中尉も、島の娘と恋に落ちます。
ネリーもケーブル中尉も、「人種偏見」から相手との「結婚」に踏み切れず二の足を踏みます。
農場主の申し出を受け入れられず、「感情的なもので」といってネリーは逃げ去ります。
そこで、農場主が「偏見は生まれつきではあるまい」とケーブル中尉にいうと、
ケーブル中尉が、「偏見は生まれつきのものではありません」といって歌い出すのです。
You've got to be carefully taught
「念入りに吹き込まれたんですよ」とでも訳すべきでしょう。
適当に訳してみるとこんな内容です。
憎しみと恐れは吹き込まれたものですよ
繰り返し吹き込まれたんですよ
小さな耳に焼き付くまで叩き込まれたんです
念入りに吹き込まれたんです!
恐れるように吹き込まれたものですよ
目の形が違う連中を
肌の色が違う連中を
念入りに吹き込まれたんです!
手遅れにならないうちに吹き込まれたものですよ
物心がつくやいなや
身内が憎む連中は皆憎むように
念入りに吹き込まれたんです!
念入りに吹き込まれたんです!
近くは、韓国、北朝鮮、あるいは中国、遠くはイスラムの人々などに対する関係もこの歌詞と無縁ではなさそう。歌詞では、さすがに「誰がどうやってその偏見を吹き込むか」は語りません。
「真実の報道ではなく、真実を隠し、偏見を吹き込むのが仕事。
巨悪を追うのではなく、目くらましするのが仕事。怪しい背景を知りながら
○○エモンを担ぎ上げておいて、土左衛門にするのが民放・大新聞の仕事。」
と、オーウェルならいったでしょうか?
You've got to be taught to hate and fear
You've got to be taught from year to year
It's got to be drummed in your dear little ear
You've got to be carefully taught
You've got to be taught to be afraid
Of people whose eyes are oddly made
And people whose skin is a different shade
You've got to be carefully taught
You've got to be taught before it's too late
Before you are six, or seven, or eight
To hate all the people your relatives hate
You've got to be carefully taught!
You've got to be carefully taught!
現代でもアメリカではコマーシャルで流れたりしているといいます。
http://www.roots-int.com/S-T/16/bbs.html
映画「南太平洋」サウンド・オブ・ミュージック二枚組がお得かも?「南太平洋」について詳しくはこちらのウェブが参考になります。
オリジナルの「南太平洋」、画面が暗かったり、褪色していたりするのがいやであれば、2001年のテレビ版ISBN 0-7888-2987-4が良いかも。オリジナル版を見た後では、配役がどうもしっくりしないような気はするものの、画面はクリア。テレビ版のお買い求めはアメリカDVD通販サイトでどうぞ。主演女優はグレン・クローズ。
http://www.asahi-net.or.jp/~ir4n-khr/booke/caravans.html#caravans
より転載
ミッチェナーの「トコリの橋」 ― 2006/01/28 14:48
大昔に読んだような記憶がぼんやりあっても、まったく内容を覚えていないので、改めて読み直したものです。わずか126ページ。ミッチェナーの小説では最も短いものかもだ。展開も他の分厚い著作とは違って早い。あっというまに読めます。
本書を書くにあたって、空母に離着陸する戦闘機に著者は実際に搭乗したようです。
主人公ブルベイカー中尉の戦闘機、敵弾を浴びて、二月の海に着水する。ヘリコプターで彼を助けるのがマイクとネスター。マイクが日本で恋人キミコ(映画では淡路恵子)をめぐる乱闘騒ぎを起こして取り押さえられ、MPに彼を引き取りにブルベイカーが久しぶりに会えた妻や子をおいてでかけるくだりがあります。
「身内が戦争で死ぬ」という事を想定していなかった司令官タラントの妻は、二人の息子を失ってから精神に異常をきたし、廃人同様になっています。あの国で幹部が今同じような目にあっている可能性は皆無でしょうが、司令官タラント少将やブルベイカー中尉の言葉には重いものがあります。タラント少将は一人呟きます。"All wars are stupid."
1953年にかかれたものですが、横須賀の米軍をめぐる光景、どれほど変わったのでしょう?ミッチェナー、44ページで横須賀を大絶賛。アメリカの認識も、日本側の対応も50年以上そのまま。首相の選挙区というのも実に象徴的。さすが小説には、殺人や、交通事故やら、住居不法侵入等までは書いていないけれど。
映画(1955)にもなっていて、主人公ブルベイカー中尉はウイリアム・ホールデン、妻のナンシーはあのグレース・ケリーが演じています。
空母、艦載機の標的が、朝鮮のみならず、アフガニスタン、イラク、イランに拡大している現代、本書の内容はいまだに生命を保っているのです。映画がDVDで発売されているのに翻訳本がない不思議さ。なにしろ憲法改変後は人ごとではなくなるのですから。
当時の日本での米兵と日本女性の恋愛を焦点に書いた本がSayonara。これも映画化されていてDVDもある。ある種Sayuriの先駆といえるのかもしれません。
あら筋は下記をどうぞ。結末まで書いてあるのでご注意を。
http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=6351
http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/booke/caravans.html
より転載
本書を書くにあたって、空母に離着陸する戦闘機に著者は実際に搭乗したようです。
主人公ブルベイカー中尉の戦闘機、敵弾を浴びて、二月の海に着水する。ヘリコプターで彼を助けるのがマイクとネスター。マイクが日本で恋人キミコ(映画では淡路恵子)をめぐる乱闘騒ぎを起こして取り押さえられ、MPに彼を引き取りにブルベイカーが久しぶりに会えた妻や子をおいてでかけるくだりがあります。
「身内が戦争で死ぬ」という事を想定していなかった司令官タラントの妻は、二人の息子を失ってから精神に異常をきたし、廃人同様になっています。あの国で幹部が今同じような目にあっている可能性は皆無でしょうが、司令官タラント少将やブルベイカー中尉の言葉には重いものがあります。タラント少将は一人呟きます。"All wars are stupid."
1953年にかかれたものですが、横須賀の米軍をめぐる光景、どれほど変わったのでしょう?ミッチェナー、44ページで横須賀を大絶賛。アメリカの認識も、日本側の対応も50年以上そのまま。首相の選挙区というのも実に象徴的。さすが小説には、殺人や、交通事故やら、住居不法侵入等までは書いていないけれど。
映画(1955)にもなっていて、主人公ブルベイカー中尉はウイリアム・ホールデン、妻のナンシーはあのグレース・ケリーが演じています。
空母、艦載機の標的が、朝鮮のみならず、アフガニスタン、イラク、イランに拡大している現代、本書の内容はいまだに生命を保っているのです。映画がDVDで発売されているのに翻訳本がない不思議さ。なにしろ憲法改変後は人ごとではなくなるのですから。
当時の日本での米兵と日本女性の恋愛を焦点に書いた本がSayonara。これも映画化されていてDVDもある。ある種Sayuriの先駆といえるのかもしれません。
あら筋は下記をどうぞ。結末まで書いてあるのでご注意を。
http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=6351
http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/booke/caravans.html
より転載
最近のコメント