ミッチェナーの「トコリの橋」2006/01/28 14:48

大昔に読んだような記憶がぼんやりあっても、まったく内容を覚えていないので、改めて読み直したものです。わずか126ページ。ミッチェナーの小説では最も短いものかもだ。展開も他の分厚い著作とは違って早い。あっというまに読めます。
本書を書くにあたって、空母に離着陸する戦闘機に著者は実際に搭乗したようです。
主人公ブルベイカー中尉の戦闘機、敵弾を浴びて、二月の海に着水する。ヘリコプターで彼を助けるのがマイクとネスター。マイクが日本で恋人キミコ(映画では淡路恵子)をめぐる乱闘騒ぎを起こして取り押さえられ、MPに彼を引き取りにブルベイカーが久しぶりに会えた妻や子をおいてでかけるくだりがあります。
「身内が戦争で死ぬ」という事を想定していなかった司令官タラントの妻は、二人の息子を失ってから精神に異常をきたし、廃人同様になっています。あの国で幹部が今同じような目にあっている可能性は皆無でしょうが、司令官タラント少将やブルベイカー中尉の言葉には重いものがあります。タラント少将は一人呟きます。"All wars are stupid."

1953年にかかれたものですが、横須賀の米軍をめぐる光景、どれほど変わったのでしょう?ミッチェナー、44ページで横須賀を大絶賛。アメリカの認識も、日本側の対応も50年以上そのまま。首相の選挙区というのも実に象徴的。さすが小説には、殺人や、交通事故やら、住居不法侵入等までは書いていないけれど。
映画(1955)にもなっていて、主人公ブルベイカー中尉はウイリアム・ホールデン、妻のナンシーはあのグレース・ケリーが演じています。

空母、艦載機の標的が、朝鮮のみならず、アフガニスタン、イラク、イランに拡大している現代、本書の内容はいまだに生命を保っているのです。映画がDVDで発売されているのに翻訳本がない不思議さ。なにしろ憲法改変後は人ごとではなくなるのですから。
当時の日本での米兵と日本女性の恋愛を焦点に書いた本がSayonara。これも映画化されていてDVDもある。ある種Sayuriの先駆といえるのかもしれません。
あら筋は下記をどうぞ。結末まで書いてあるのでご注意を。

http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=6351

http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/booke/caravans.html
より転載

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